分散してる“つもり”が危ない理由|相関係数で本当の分散を考える
投資の世界では、当たり前のように語られます。
たとえば、S&P500を保有している。
「分散のために、オルカンも買おう」
そう考える方も多いのではないでしょうか。
――それは、本当に“分散”になっていますか?
💡 誤解のないように補足すると、インデックス自体は高度に分散された優れた商品です。
ここでお伝えしたいのはインデックスの否定ではなく、
「相関を意識せずに、分散している“つもり”になっていないか」という問いです。
なぜ単一戦略は不安定になるのか
仮に、
期待値
が十分にある戦略を1つ持っていたとします。
統計上は優位性がある。
モンテカルロ
でも生き残っている。
それでも、こうなります。
- 連敗が先に来る
- 想定
DD
に近づく
- 「本当に
エッジ
あるのか?」と疑い始める
資産曲線が大きくブレやすくメンタルに直結する
単一戦略は、「
資産曲線
が荒れやすい」という客観的事実があります。
そして資産の上下は「勝てるかどうか」に次いで運用者のメンタルを削ります。
ドローダウンを分散で「浅くする」方法
モンテカルロ
分析など綿密に撤退
ライン
を定義したとしても、
それは「壊れたら止める」という守りの戦略です。
ドローダウン
そのものは避けられない現実です。
では、そもそも
破綻しにくい設計にはできないのか?
それを強力に
サポート
するのが、
ポートフォリオ理論
です。
少し専門的に言えば、指標でいえば、シャープレシオよりも
ソルティノレシオを意識した設計思想に近いと言えるでしょう。
分散とは「銘柄を増やすこと」ではない
分散=銘柄をたくさん持つこと
ではありません。
本質は同じタイミングで同じ方向に動かないものを組み合わせること
その鍵になるのが 相関係数 です。
分散したつもりの高相関ポートフォリオは、『負けが重なるタイミングで
レバレッジ
をかけている』 のと同義です。
相関係数とは何か?
相関係数は −1 から +1 の間で表されます。
| 相関 |
意味 |
具体的な例(イメージ) |
| +1 |
完全に同じ動き |
同じ銘柄で「15分足」と「30分足」の順張り(重複でリスク2倍※) |
| 0 |
無関係 |
個別株の順張り と 先物夜間の逆張り |
| −1(理論上) |
完全に逆の動き |
同一銘柄を常に同額で完全両建て |
※期待リターン、
ボラティリティ
も2倍。
ドローダウン
もほぼ同時に発生
例えば:
- 同じ
ブレイク
アウト系戦略を3つ並べる
→ 相関は高くなりやすい
-
トレンド
フォロー+逆張り
→ 相関は低くなりやすい
相関が低いほど、ドローダウンは滑らかになる
分散の本質は、この数値にあります。
冒頭の例である
この2つの相関係数は、長期で見るとおおよそ 0.8〜0.95前後 と非常に高い水準です。
つまり、
ほぼ同じ方向に動くということになります。
相関が高いもの同士では、ドローダウンも同時に発生しやすい
見た目は2商品でも、リスク構造は非常に近い。
分散効果は限定的になりやすい。
期待値は同じでも「リスクを大幅に限定できる」
重要なのは、
リターンをあまり落とさず、DDを圧縮できる
これが
ポートフォリオ理論
の力です。
例を見てみます。
単一戦略
低相関3戦略を均等配分
- 合計
期待値
:年利30%前後
- 最大
DD
:20〜25%程度に圧縮される可能性
なぜ相関が低いとDDが浅くなるのか
具体例:100万円で運用している場合
- 平均最大
ドローダウン
(μ):20%
-
標準偏差
(σ):8%
上記前提で3つのケースを比較してみます。
① 単一戦略の場合
- 想定
DD
:36%(2σ水準)
- 元本100万円 → 64万円まで減少
資産は一直線に削られます。回復するまで、他に助けはありません。
② 複数戦略だが「相関がほぼ同じ」場合
例:相関係数0.9前後
ほぼ同じタイミングで
DD
に入ります。
結果:
単一戦略を“
レバレッジ
拡大”したのと近い状態36%の
DD
がそのまま発生する可能性が高い。
「数は増えたが、谷は浅くならない」。
③ 複数戦略かつ相関係数が0の場合
この“ズレ”が生まれます。
すると合成
資産曲線
は:
- 谷が埋まる
- 傾きが緩やかになる
- 2σ到達確率が下がる
理論的には、分散は √n に近い形で減少します(相関0前提)。
つまり3戦略非相関なら、
-
DD
は約1/√3 ≒ 0.58倍
- 36% × 0.58 ≒ 約21%
2σ水準でも、20%前後まで圧縮され得る。
※もちろん理論上の例ですが、実際に起こり得ます。
ロバストなポートフォリオとは何か
前回触れた「
ロバスト
」という概念。
これは単一戦略だけでなく、ポートフォリオ全体にも適用できます。
ロバスト
なポートフォリオとは:
- 異なるロジック
- 異なる時間軸
- 異なる市場環境で機能
- 低相関
これらを意図的に設計した集合体です。
破産確率と分散を組み合わせる
そして、ここが本質です。
仮に、単一戦略の「破綻確率」が5%だったとします。
20回に1回は壊れる可能性がある
では、その戦略を独立性の高い3つで構成した場合はどうなるでしょうか?
破綻確率は単純加算ではなく、乗算になります。
- 0.05 × 0.05 × 0.05 = 0.000125
- → 0.0125%
- 理論上は、約8,000回に1回。
分散の本当の威力
つまり、単一の場合だと
20回に1回壊れる構造が、
8,000回に1回になる。
破綻に対する強度は、約400倍です。
ここが本質で、これが分散が大事と言える理由です。
※あくまで数学的な理論値ではある点には留意
もちろん現実は完全独立ではありません。
相関はゼロにならないし、危機時には上昇します。
それでも、破綻確率が“掛け算”で減る構造を持てるのは、ポートフォリオ設計だけです。
分散は「メンタル負荷の平滑化」でもある
資産曲線
が滑らかになると、
- 2σに到達しにくい
-
ロット
を維持しやすい
- 停止判断が冷静にできる
理論は数学的ですが、実行するのは運用者である人間とその運用者の資産です。
メンタル負荷への対策としても強力な防壁になります。
それでも万能ではない
注意点もあります。
- 相関は固定ではない
- 危機時には相関が上がる
- ブラックスワンでは全てが同時に崩れる
ここでも再び出てくるのが、
非定常
だからこそ、
-
モンテカルロ
で撤退
ライン
を定義し
- 相関を監視し
- 定期的に再最適化する
この循環が必要になります。
最後に
トレードにおいて、「勝ち方」は常に非定常な相場次第の「仮定」でしかありません。
ですが、「負け方」だけは設計によって事前に「断定」できます。
制御できるのは、利益ではなく損失だけです。
この“断定できる部分”をどこまで強固にできるか。
それが、運に左右されない長期的な勝ち残りを決めます。
勝ちは運の要素を含む。負け方だけは自分で決められる。
相関係数・複合エクイティ分析ツールを準備中
「この戦略を追加したら、全体の
ドローダウン
はどう変わるのか?」を可視化できるように。
現在、複数の
バックテスト
結果から、「戦略間の相関係数」や「合算後の
資産曲線
(複合エクイティ)」を瞬時にシミュレーションできるツールを開発中です。
公開時期は未定ですが、完成次第お知らせします。
自分のポートフォリオの「分散効用」を確認したい方は、右上のログインボタンから会員登録をしてお待ちください。
破綻を招く「最大の敵」
ここまでの話を理解すれば、数学的に「負けない仕組み」を構築できるはずです。
それでも、なお退場していく人が後を絶たない理由があります。
どれほど高度な知性で設計したシールドも、運用者自身の本能が、内側から破壊してしまうからです。
プラトー(停滞期)の焦燥
滑らかな
資産曲線
ゆえの“地味さ”。
その退屈さに耐えられず、刺激を求めて余計な
エントリー
をしていないか?
リビドー(衝動)の暴走
連敗した瞬間、昨日まで信じていた
「相関係数」や「2σ」を投げ捨て、
ロット
を引き上げていないか?
逆報酬の罠
正解を選んでいるのに苦しい。
間違ったことをすれば楽になる。
そんな“脳のバグ”に、本当に勝てるのか?
といった心理面の防壁について深掘りします。
この絶望的な
ギャップ
を埋めるための、
意志の力に頼らない“仕組み”の設計が重要になります。
理論を実行できる「仕組み」があるか
「低相関な戦略を組み合わせればいい」という理屈は正しくても、それを個人が実行し続けるには限界があります。
手法が増えるごとに、発注管理や
ロット
調整の手間は倍増します。これを手動で行うのは現実的ではありませんし、システム化しようとしても、プログラムを安定して稼働させるには面倒な実装が必要です。
理論は正しい。しかし実装が難しい。
私が Flex Order(FO)の設計で
- 複数戦略を並列で動かせる安定性
- ブラウザからの即時一括停止・制御機能
にこだわったのは、この「理論上は正しいが実装が面倒な分散運用」を、手軽に実行できるようにするためです。
👉 FO(Flex Order) 導入・構築サービスを見る