SMC(Smart Money Concept)入門|機関投資家の動きを理解して相場を読む
「
エントリー
したダマシだった」「損切りしたら急に反転した」
実はこれはたまたまとは言い切れません。なぜ、個人トレーダーが動いた直後に相場が反転するのか?
💡 個人投資家が “
カモ
” になりやすい理由は、「大口がどこで動くか」を知らないままテクニカルだけ見てしまうことにあります。
相場を動かしているのは誰か?
そんな“理不尽な動き”の裏にあるのが、Smart Money(スマートマネー)=機関投資家の行動原理です。
彼らは「一般トレーダーの損切りポイント」を狙って仕掛けを行い、安く買い・高く売る を徹底しています。
本記事では、SMC(Smart Money Concept) の基本構造を解説し、価格の裏にある「大口の意図」を読み解く視点を身につけます。
💡 コードや戦略はあくまで学習用のサンプルです。
実際の利益や成果を保証するものではありません。
必ず
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などで検証の上、ご自身の判断・責任で戦略に取り組んでください。
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🧩 SMC とは?|スマートマネーの思考を理解する
SMC(Smart Money Concept)は、機関投資家の行動ロジックに基づいた価格分析手法です。
ローソク足
や
RSI
のような「結果」ではなく、価格が動く“理由” に焦点を当てます。
| 要素 |
概要 |
| Smart Money |
大口投資家・ヘッジファンドなど、市場を動かせる資金を持つ存在 |
| Concept |
その資金の動き方や心理を理論化した概念 |
| 基本思想 |
「価格は流動性を狩りにいく」=個人の損切りを流動性として利用する |
⚠️ 注意:SMC は一つの分析視点であり、すべての相場に当てはまるわけではありません。
実際のトレードではリスク管理を徹底し、自己責任でお願いします。
📈 SMC の基本構造:相場は“流動性”で動く
SMC(Smart Money Concept)は「大口の資金がどのように市場を動かしているか」を読み解く理論です。
今回はそれらを扱う前の “入門編”として、SMC の基本構造(全体像) を整理してみましょう。
SMC では、相場の動きを大きく 5 つのフェーズ に分けて考えます。
| フェーズ |
説明 |
例え |
| 1. 流動性狩り(Liquidity Grab) |
個人トレーダーの損切りや逆指値を刈り取り、有利な価格帯でポジションを仕込む。 |
「カモをおびき寄せて一気に網をかける」 |
| 2. 方向づけ(Displacement) |
刈り取った流動性を燃料に、一方向へ価格を加速させる。 |
「ロケット発射のように一気に加速」 |
| 3. 再テスト(Mitigation) |
押し・戻りを作って取りこぼした流動性を拾い、次の上昇(下降)への燃料を補充。 |
「一度着陸して燃料補給」 |
| 4. 継続(Continuation) |
トレンドを維持しながら、段階的にポジションを利確・再構築。 |
「安定飛行で燃料を消費しながら航続」 |
| 5. 分配(Distribution) |
個人の買いを吸収しながら、静かにポジションを手放していく段階。 |
「山頂で観光客(カモ)に高額で荷物を売りつけて下山」 |
💡 つまり、相場の“逆側”に本命の動きがある と捉えるのが SMC 的な視点です。
SMC の代表的な現象
SMC では、相場の大きな動きを 5 段階で捉えますが、さらに各段階で見られる代表的な現象として OB(Order Block)、FVG(Fair Value Gap)、BOS(Break of Structure)、CHOCH(Change of Character) があります。
| 現象 |
上昇目線 |
下降目線 |
| CHOCH(Change of Character) |
下降トレンドの安値更新失敗 → 上昇転換の前兆。次の BOS を待つ。 |
高値更新に失敗 → 勢いが弱まり下降転換の前兆。戻り売りタイミングの目安。 |
| OB(Order Block) |
スプリング前の だまし下抜け後に発生した買いブロック(大口の買い仕込み) |
スプリング前の だまし上抜け後に発生した売りブロック(大口の売り仕込み) |
| FVG(Fair Value Gap) |
急上昇でできた空きゾーン。価格が戻れば押し目買いポイント。 |
下降転換時は急下落でできた空きゾーン。戻り売りの目安。 |
| BOS(Break of Structure) |
スプリング後に直近高値突破 → トレンド継続のシグナル。 |
スプリング後に直近安値を下抜け → 下降トレンドへの転換シグナル。 |
💡 ※ CHOCH はトレンド転換時に一度だけ発生する特殊なサインです。 対して OB・FVG・BOS はトレンド継続中に何度も現れる構造的な現象です。
🧩 流動性狩り(Liquidity Grab)|個人の注文を利用して仕込む
SMC では、まず大口は 個人トレーダーの損切りや
逆指値
注文を狙うことから始めます。
単に「買う/売る」だけではなく、相場を意図的に動かして「流動性を刈り取る」のがポイントです。
具体例
- 価格 1000 円の節目
- 個人の売り注文や損切りは 999 円付近に集中
- 大口は 1000 円に買いの見せ板を置き、支えがあるように見せる
- 徐々に価格を下げつつ見せ板を解除 → 個人の売り注文やストップを発動
- あらかじめ 990 円に指値を置いて有利に買いポジションを大量取得 -> OB(Order Block)
💡 個人トレーダーが「1000 円をブレイクした!」と判断して売り注文を入れると、
ロング
勢のストップが発動。
価格が一気に下がり、大口は狙っていた 990 円で買いポジションを取得。
このような動きを SMC では 流動性の刈り取り(Liquidity Grab) と呼びます。
1010 ──
1005 ──
1000 ──┐ ← 厚い板(見せ板)
999 ──┼─ 個人のストップ集中
995 ──┘
990 ── ← 大口が指値で待機 → ここで大量買い:OB(Order Block)
🧩 方向づけ(Displacement)|刈り取った流動性で上昇トレンドを作る
流動性狩り(Liquidity Grab)で 個人の売りや損切りを一掃 した後、
大口は刈り取った流動性を 燃料 にして 価格を上昇トレンド方向に加速 させます。
これを SMC では 方向づけ(Displacement) と呼びます。
具体例(上昇トレンド形成)
- 個人のロング勢は 999 円付近で損切り発動 → 売り圧力を一掃
- 大口は 990 円で大量の買いポジションを確保済み
- ここから 一気に買い上げて直近高値の 1010 円を BOS
価格推移イメージ
1030 ── ← Displacement発動で到達
1015 ──
1010 ── ← 直近高値【BOS(Break of Structure)】:一気に買い上げ
1005 ──
1000 ──┐
999 ──┼─ 個人の損切り発動 → 売り一掃
990 ──┘ ← 大口の仕込み完了: OB(Order Block)
💡 ポイント
すでに Liquidity Grab で流動性を刈り取っている(障害ゼロのスタートライン)
- 個人の損切りや売り注文は発動済み
- 価格を動かす障害が減っている
急激に買い上げる理由 = 市場心理の操作
- 価格を上昇方向に加速させ、他のトレーダーに「上昇トレンドが発生した」と認識させる
- 遅れて乗る 個人の買い を 新たな燃料に、さらに流動性を作る
- 1000 円ブレイク失敗狙いのショート も 強制買い戻し で加速
見せ板などはあまり必要ない場合が多い
- 方向づけ段階では、価格を加速させることが主目的
- 板操作よりも、すでに刈り取った流動性を使って市場に勢いを付けるイメージ
🔹 本質:刈り取った流動性(損切り・売り注文)を 燃料 に、大口は 自分の都合の良い方向へ市場を強制的に押し上げる → これが Displacement
🧩 再テスト(Mitigation)|押し目で取りこぼしを拾い、次の上昇へ
Displacement で 一気に上昇トレンドを刻み込んだ後大口は 押し目 を利用して 取りこぼした流動性 を拾い、次の上昇波 への 燃料を補充 します。これを SMC では 再テスト(Mitigation) と呼びます。
具体例(上昇トレンド継続)
- 1030 円:Displacement で高値更新 → 個人の利確売り発生
- 1025 円付近:押し目形成 → 個人の「戻り売り」や「高値ブレイク失敗狙い」の注文が残る
- 大口は 1015 円ゾーン に 指値買い を仕込み済み
- 押し目で 再び買い支え → 残った売りを Mitigation(軽減・吸収)
価格推移イメージ
1050 ── ← 次の上昇波へ
1040 ──
1025 ──
1030 ──┐ ← Displacement 高値 (次のBOS)
1025 ──┼─ 押し目形成
1020 ──┼─ 個人の戻り売り・ショート集中
1015 ──┘ ← OB: 大口が指値で待機 → Mitigation発動
大口は 1015 円で追加
ロング
を確保個人の「戻り売り」は 即座に吸収 → 売り圧力 再び一掃
結果:次の上昇(1050 円~) への スムーズな加速
✅️ FVG(Fair Value Gap)
買い上げで
ローソク足
が急上昇し、途中で取引がほとんど発生していない空白ゾーンができる。
この例で言うと Displacement 高値タッチ後の (1015〜1025) が FVG です。
価格が戻ってくると、未消化の注文が残っているため押し目買いのチャンスになります。
💡 ポイント
個人トレーダーの行動
- 「1030 円で売ろう」と指値していたが、価格が押し目(下げ)で 1020 円まで下がる
- 「もう成り行きで売っちゃおう」と判断する
大口の動き(再テスト/Mitigation)
- 1015 円付近で買い指値を置いて待機(OB)
- 個人の成り行き売りが到達すると、低い価格で効率的に買いポジションを取得
再テストの目的 = 燃料補充と売り圧の排除
- 大口はここで 残流動性を Mitigate(吸収)
- Displacement で使い切った勢いを 再チャージ
- 個人の「押し目買い」も 味方 に変える
🔹 本質:押し目を 「買い支え」ではなく「売り圧の排除」 と捉える → 大口は 次の波を確実にするための最終調整 を行う
🧩 流動性循環(Trend Continuation)| Displacement と Mitigation の繰り返し
大口は「流動性狩り → 方向づけ → 再テスト」という一連の流れを 何度も繰り返し、
市場の流動性を循環させながら 上昇トレンドを維持 します。
具体的な流れ
- Displacement(方向づけ) で急上昇を作る(BOS)
- Mitigation(再テスト) で押し目を作り、OB で取りこぼしを吸収
- 新たに参入した個人の買いを利用して、再び上昇
- これを 段階的に繰り返すことでトレンドが形成・維持される
価格推移イメージ
1070 ── ← Displacement(上昇)
1050 ── ← Mitigation(押し目拾い)
1030 ── ← Displacement
1015 ── ← Mitigation
1000 ── ← 初動のLiquidity Grabゾーン
💡 ポイント:
大口は「常に新しい流動性(個人の注文)」をエネルギー源にしており、
Displacement と Mitigation の繰り返しによってトレンドを滑らかに維持しています。
🧩 流動性枯渇と転換(Distribution)|買い手が尽きると売りへ転じる
長く続いた上昇トレンドの終盤では、
個人投資家が「さらに上がる」と信じて買いに殺到します。
しかしこれは、大口が出口戦略に入る合図 でもあります。
具体例(天井形成)
- 価格が 1080 ~ 1100 円付近で個人の買い注文が集中
- 大口はその買いを 出口として自分のロングを売り抜ける
- 同時に、上ヒゲを作る形で「逆方向の流動性狩り(ショート仕込み)」を開始
- 1080〜1100 円の天井で「買い手が尽きた」=高値更新失敗
- -> CHOCH(Change of Character)
価格推移イメージ
1100 ──┐ ← 個人が「ブレイクだ!」と買い殺到するものの 高値更新失敗、勢いが弱まる -> CHOCH発生
1080 ──┼─ 大口は静かに利確・売り仕込み(Distribution)
1060 ──┘ ← 次のLiquidity Grab(今度は下方向のBOSが発生する)
💡 ポイント:上昇トレンドの終盤では、買い手の流動性が尽きる瞬間に
大口は「今度は下方向の流動性狩り」を始めます。
🧩 SMC とワイコフ理論の関係
SMC は、現代市場における大口の動きを分析する手法ですが、元をたどればワイコフ理論の発想を踏襲しています。
| 比較項目 |
ワイコフ理論 |
SMC(Smart Money Concept) |
| 時代背景 |
1920 年代(株式市場中心) |
現代の株式・FX・指数・暗号資産市場 |
| 着眼点 |
出来高・価格構造・フェーズ |
流動性・ポジション構造・オーダー心理 |
| コア概念 |
吸収(アキュム)・分配 |
流動性狩り・ブレイク構造(BOS) |
💡 ワイコフ理論は、「大口がどのフェーズにいるのか」を把握する地図。
SMCは、そのフェーズの中で「どう仕掛けているのか」を読み解く顕微鏡。
📌 まとめ|入門としての SMC の理解ポイント
本記事では、SMC(Smart Money Concept) の基本構造を入門編として整理しました。
- 相場は 個人トレーダーの損切りや逆指値 を利用して大口が動かす
- 価格の動きは 流動性狩り → 方向づけ → 再テスト → 継続 → 分配 という 5 段階で循環
- Displacement と Mitigation の繰り返しがトレンドの燃料
- トレンドの終盤では Distribution(分配) により、大口は静かにポジションを手放す
- SMC はワイコフ理論の考え方をベースに、現代市場での 大口の仕掛け方を具体的に読むミクロな視点
大口の“工程”を、個人は“流れ”で捉える
大口は扱う資金と責任の為にこういった工夫をしながら相場を誘導しています。
一見理不尽にも思いますが、これは流動性を利用した仕組みです。
一般的な個人トレーダーにはこういった操作はまず不可能ですが
逆に言えばそんな面倒な工程を踏まずに「大口が作ってくれた流れにただ乗ればいいだけ」とも言えます。
大口の意識や市場の見方を俯瞰することで、戦略設計のヒントが得られるかもしれません。
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