一目均衡表は「相場の調和」を読むツール

トレンドが強いのか、勢いが弱まっているのか――。
その“全体のバランス”を一目で把握できるのが「一目均衡表 (Ichimoku Cloud)」です。
海外では “Ichimoku Cloud” と呼ばれ、世界中のトレーダーに使われる日本発の
テクニカル指標
。
5つの線と“雲(Kumo)”によって、市場の流れ・強弱・未来のバランスまで視覚的に捉えられるのが特徴です。
移動平均線 や MACD が「トレンドの方向」を示すのに対し、一目均衡表は「トレンドの流れとタイミングの調和」を示すツールです。
💡筆者メモ:一目均衡表は「相場の呼吸と調和」を読むための指標。
短期の動きに惑わされず、全体のリズムを捉えることができます。
👥 この記事は誰向け?
- 移動平均線やMACDでは“今の相場の全体感”がつかみにくいと感じている人
- トレンド転換だけでなく、「勢い」や「タイミング」も一目で把握したい人
- TradingViewで雲の見方や、設定の意味を整理しておきたい人
- スイング〜中期トレードで、順張りと逆張りを使い分けたい人
📖 この記事でわかること
- 一目均衡表の基本構成(5本線と雲の役割)
- 各線の意味と、相場が「強気」or「弱気」かを判断するコツ
- トレンド転換を捉える実践的な見方(雲抜け・三役好転)
- TradingViewでの設定方法とカスタム表示のポイント
- 他の指標(MACD・RSIなど)との併用で精度を高める方法
一目均衡表の基本構造と意味

一目均衡表は、以下の5本の線で構成されています。
項目 | 計算式 | 意味 |
|---|---|---|
転換線 | (過去9期間の高値+安値)÷2 | 短期トレンド |
基準線 | (過去26期間の高値+安値)÷2 | 中期トレンド |
先行スパン1 | (転換線+基準線)÷2 を26期間先に表示 | 未来の支持・抵抗① |
先行スパン2 | (過去52期間の高値+安値)÷2 を26期間先に表示 | 未来の支持・抵抗② |
遅行スパン | 現在の終値を26期間前に表示 | トレンドの追認 |
このうち、先行スパン1と2の間の領域が「雲(Kumo)」です。
雲が厚い=相場が安定しており、抜けにくい抵抗帯。
雲が薄い=勢いが強く、トレンド転換が起きやすいポイントです。
見方の基本:雲と三役好転で方向性を判断

状況 | 意味 |
|---|---|
価格が雲の上にある | 上昇トレンド優勢 |
価格が雲の下にある | 下降トレンド優勢 |
価格が雲の中にある | 方向感がない(様子見) |
加えて、以下の3条件が揃うと強いトレンドのサインです。
三役好転(買いシグナル)
- 転換線が基準線を上抜け(短期の勢いが中期を上回る)
- 終値が雲を上抜け(トレンド転換)
- 遅行スパンが価格を上抜け(市場全体が強気)
✅️ 三役逆転(売りシグナル)はその逆です。
時間軸に合わせた設定の考え方

TradingView のデフォルト設定(9, 26, 52)は日足ベースの伝統的な組み合わせ。
これは「9=1.5週間」「26=約1ヶ月」「52=約2ヶ月」を意味します。
スイング や デイトレ に合わせて、短期化する場合は以下が目安です。
スタイル | 設定(転換線, 基準線, 先行2) | 特徴 |
|---|---|---|
スタンダード(日足) | 9, 26, 52 | 最も一般的。バランス型。 |
スイング トレード | 7, 22, 44 | 反応をやや早めたい方向け。 |
デイトレ ード | 5, 20, 40 | 短期の値動き重視。ダマシが増える傾向あり。 |
💡ポイント:一目の数値は単なる慣例ではなく、「バランス=均衡」を表現するためのリズム。
✅️この表に示した設定値はあくまで一般的な目安であり、実際には自分のトレードスタイルや時間軸に合わせて、 バックテスト を行い最適な値を見つけるのが現実的です。
バックテスト についてはこちらで詳しく紹介しています。
一目均衡表 × MACD:流れと勢いの融合

- 一目均衡表 → トレンドの方向とタイミング
- MACD → 勢い(モメンタム)の強弱
この2つを組み合わせることで、「どの方向に動くか」+「どれくらいの力があるか」を同時に判断できます。
例:
- 一目で雲上抜け(上昇転換)+MACDがゼロライン上昇 → 強い上昇トレンド
- 一目で雲下抜け+MACDがゼロライン下落 → トレンド転換の初動
TradingViewでの実践例(カスタム表示)

//@version=6
strategy("Ichimoku Cloud", shorttitle="Ichimoku", overlay=true)
// === パラメータ ===
tenkan_len = 9
kijun_len = 26
senkou_b_len = 52
displacement = 26
// === 各線の計算 ===
tenkan = (ta.highest(high, tenkan_len) + ta.lowest(low, tenkan_len)) / 2
kijun = (ta.highest(high, kijun_len) + ta.lowest(low, kijun_len)) / 2
senkouA = (tenkan + kijun) / 2
senkouB = (ta.highest(high, senkou_b_len) + ta.lowest(low, senkou_b_len)) / 2
chikou = close
// === 各線のプロット ===
p_tenkan = plot(tenkan, color=color.new(color.red, 0), title="Tenkan-sen")
p_kijun = plot(kijun, color=color.new(color.blue, 0), title="Kijun-sen")
p_chikou = plot(chikou, offset=-displacement, color=color.new(color.green, 0), title="Chikou Span")
// === 先行スパン(未来へシフト) ===
p_senkouA = plot(senkouA, offset=displacement, color=color.new(color.orange, 0), title="Senkou Span A")
p_senkouB = plot(senkouB, offset=displacement, color=color.new(color.purple, 0), title="Senkou Span B")
// === 雲の塗り分け ===
cloudColor = senkouA > senkouB ? color.new(color.green, 80) : color.new(color.red, 80)
fill(p_senkouA, p_senkouB, color=cloudColor)- 他の指標と組み合わせて実装 → ダマシの少ないエントリーや利確のタイミングを自由に調整
- 詳しくはこちら
- バックテストで戦略評価 → 過去相場で精度や損益を検証
- 詳しくはこちら
- 通知機能を組み合わせる → 自動でアラート・発注まで可能
- 詳しくはこちら
まとめ:一目均衡表は“相場の調和”を読むための羅針盤

- 雲の厚みと位置関係で、トレンドの強弱を可視化できる
- 三役好転・逆転で明確な転換サインを判断
- MACDなど勢い系指標と組み合わせると精度が上がる
- 数値設定は“リズム”であり、バックテストで自分の相場観に最適化を
一目均衡表は、単なるインジではなく「相場全体のリズムを感じ取るツール」。
慣れてくると、雲の形だけで“次の一手”が自然と見えてくるはずです。